今更オリンピックの話

 かつてないほど熱心に観たオリンピックでした。

 数々の爆笑シーンが、目に焼きついて離れません。

 ウサイン・ボルトの奇妙な踊り、男子柔道100キロ超級石井彗選手のインタビュー「日本に帰ったらまず何をしたいですか?」


「遊びたいっす!!


……い、いや、練習したいっす!!」

女子柔道63キロ級谷本歩実選手の「爆笑内股」などなど、幾たびも腹を抱えて笑ってしまったものでした。

 しかし、数ある名場面の中でも群を抜いて笑わせてくれた光景がありました。男子柔道66キロ級・内柴正人選手が金メダルを獲得した直後、放映していたフジテレビのスタジオに映像が切り替わってすぐのものです。


 アイドルの相武紗季がコメントしています。

「ほんっとに胸が一杯です!あの、試合が終わってすぐにスタンドに駆け寄って、奥様やお子さんに声を掛けてらしたじゃないですか。あそこで、ものすごくジーンときてしまって、やっぱり内柴選手の強さを支えていたのは、家族への愛や絆だったんだなあって……。」


 コメントが終わった瞬間に引いたカメラが捕らえた、がっくりとうなだれる井上康生(※)。


 ああもうこれは開催五日目にして、このオリンピック最高の爆笑シーンが決定してしまった……!涙が出るほど笑わせていただきました。


 ありがとうコーセイ。


 ごめんよコーセイ。


 君が負けたのは、アキアキ(※)への愛が弱かったからじゃない。


 家族の数が足りなかったからだ。


 増やして、復帰しちゃおーぜ。


 応援するからさ。



(※)野暮の極みのような解説


 2008年初頭に、グラビアアイドル東原亜紀(通称アキアキ)との結婚を発表した柔道家井上康生。しかし競馬ファンたちは、井上の未来に暗い影が落ちたことに気付かずにはいられなかった。土曜深夜の競馬番組「うまっチ」で、日曜メインレース予想を披露していたアイドルたちの一員であったその東原亜紀が、紛れもない「本命キラー」であることは、誰の目にも明らかだったからである。アキアキが印をつけた馬は、どんなに有力視されている馬でも一着することはなかった……。

「おいおい、いーのかよコーセイ。」

「勝負を生業にしている男が、あのアキアキを嫁にするなんて!」

「コーセイ、目を覚ませ!その女はサゲ○○だ!」

「いや、コーセイはすべてを知った上で彼女を選んだのさ……。」


「……愛、か。」


 井上康生北京オリンピック出場切符を逃したとき、男たちはみな声を殺して泣いたのであった。