2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

無名草子九 夜半のねざめ(原文)

九 夜半のねざめ 寢覺こそ取り立てていみじき節もなく、又さしてめでたしといふべき所なけれども、初めよりたゞ人ひとり〔の〕ことにて、ちる心もなく、しめじめとあはれに心入りて作り出でけん程思ひやられて、あはれにありがたきものにて侍れ。いづくか少…

無名草子八 狭衣物語(現代語訳)

八 狭衣物語 また、「幾多の物語のなかで、素晴らしいとお思いになられたものや、つまらなく感じられたものを教えてください。」と言うので、「それも見ずに語るのはなかなか難しいものですが。」などとためらいがちではあったけれど、「『狭衣物語』は『源…

無名草子八 狭衣物語(原文)

八 狭衣物語 又、「物語のなかにいみじともにくしとも思されむこと仰せられよ。」といへば、「そも諳には。」など憚りながら、「狭衣こそ源氏につぎてはよ〔う〕覺え侍れ。『少年の春は。』とうち始めたるより、言葉遣ひ何となくえんに、いみじく上ずめかし…

無名草子七 源氏物語 ニ ふしぶしの論(現代語訳) 

ニ 場面の論 また例の人が「人物の様子は一通りお聞きしました。それでは、趣深いところでも素晴らしいところでも、心に沁みて感動的な場面を仰ってください。」と言うと、「ずいぶんと手の掛かるわがままなお方ですこと。」と大笑いしながらも皆が口々に言…