2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「玉藻」4

すっかり忘れてた。ぼくは程よい温度になったカレーを勢いよく掻っ込んだ。なんだ、知らなかったのか。ホッとしたような、物足りないような気分だった。ひどいことを言ったのが父さんに知られなかったのは良かったけど、母さんにとっては父さんに話すほどの…

「玉藻」3

居間に母さんたちはいなかった。テーブルの端っこに座って、カレーが温まるのを待つ。父さんはカレーが焦げ付かないように時々かき混ぜながら、つまみの支度をしている。冷奴と枝豆を小皿に盛り付けて箸のそばにトンと置くと、冷蔵庫からビールを取り出す。…

「玉藻」2

「あのさあ、母さん。どうして今年に限って他のところに行きたいなんて言い出したの。」 返事はない。母さんはじっとぼくを睨みつけている。 「……別に理由なんてない、かな。違うよ。理由ならある。自分じゃ気付いてないだけさ。こないだ、ゴールデンウィー…

「玉藻」1

夏休みに、おじいちゃんちに行けなくなるかもしれない。父さんが仕事で行けないのは毎年のことだけど、今年は母さんまで「たまには他のところに行きたい」と言い出したのだ。カナはすぐに母さんと一緒になって「高原なんて涼しくて良さそう」とか「海外のビ…

奪われて。

わたしは、自分でこんな事を言うのは恥ずかしいのですが、ほんの少しだけ素直ないい子だったんです。だからオトナの言うことを信じました。昔の人の言ったことを信じました。そして実行に移しました。それがとても難しくて実行しきれないことでも、心掛ける…

あけましておめでとうございます。

旧年中はご愛読、ご訪問くださいまして誠にありがとうございました。 今年はまず一つ目の大イベントとして「開高健ノンフィクション賞」への応募があります。 枚数は原稿用紙300枚程度。締切りは2月末日(当日消印有効)。 ひとまずここ2年ほどの出来事…