2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

無名草子七 源氏物語 ニ ふしぶしの論(原文) 

ニ ふしぶしの論 又例の人「人の有樣はおろおろよく聞き侍りぬ。あはれにもめでたくも、心にしみて覺えさせ給ふらむふしぶし仰せられよ。」といへば、「いとうるさき慾深さかな。」なんど笑ふ笑ふ、「あはれなることは桐壺の更衣の失せし程、帝の歎かせ給ふ…

無名草子七 源氏物語 ハ 男の論(現代語訳)

ハ 男の論 またさきほどの人が「男の方ではどなたがご立派でしょう。」と言うと、「源氏の君の良し悪しを決めてしまうなんてもったいないことですし聞きたいとも思いませんから申しませんけれど、どうしても言いたくなってしまうこともたくさんございます。…

無名草子七 源氏物語 ハ 男の論(原文)

ハ 男の論 又例の人、「をとこのなかには誰々か侍る。」といへば、「源氏の大臣の御事はよしあしなど定めむも、いとことあたらしくかたはらいたきことなれば、申すに及ばねども、さらでもと覺ゆるふしぶし多くぞ侍る。先づ大内山の大臣、若くより互に隔てな…

無名草子七 源氏物語 ロ 女の論(現代語訳)

ロ 女の論 この若い人が「ご立派な女性といえばどなたでしょうか。」と言うと、「桐壺の更衣、藤壺の宮でしょう。葵の上の自らを省みるところも素晴らしいですね。紫の上がご立派でいらっしゃることは言うまでもありません。明石も奥ゆかしく魅力的だと言い…

無名草子七 源氏物語 ロ 女の論(原文)

ロ 女の論 この若き人「めでたき女は誰々かは侍る。」といへば、「桐壺の更衣、〔藤壺〕の宮。葵の上のわれから心もちひ。紫〔の〕上さらなり。明石も心にくくいみじといふなり。又いみじき女は朧月夜の内侍(ないしのかみ)。源氏流され給ふもこの人のゆゑ…

無名草子七 源氏物語 イ 巻々の論

イ 巻々の論 「さてもこの源氏作り出でたることこそ、思へど思へどこの世一(ひとつ)ならずめづらかに覺ゆれ。誠に佛に申し請いたりける驗(しるし)にやとこそ覺ゆれ。それより後の物語は、思へばいとやすかりぬべきものなり。かれを才覺にて作らんに、源…

無名草子六 佛

六 佛 又、「ことあたらしく申すべきにはあらねど、この世にとりて第一にめでたく覺ゆる事は、阿彌陀佛こそおはしませ。念佛の功紱のやうなど初めて申すべきならず。南無阿彌陀佛と申すことは返す返すめでたく覺え侍るなり。人の怨めしきにも、世のわびしき…

無名草子五 涙

五 涙 又、「あまた世にとりていみじきことなど申すべきにはあらねど、涙こそいとあはれなるものにて侍れ。情けなき武士(もののふ)の柔ぐことも侍り。色ならぬ心のうちあらはすものは涙に侍り。いみじくまめだちあはれなるよしをすれど、少しも思はぬこと…

無名草子四 夢

四 夢 又、「何のすぢと定めて、いみじといふべきにもあらず、あだにはかなきことにいひならはしてあれど、夢こそあはれにいみじく覺ゆれ。遙かにあと絶えにし仲なれど、夢には関守も強からで、もと来し道もたちかへること多かり。別れにし昔の人もありしな…

無名草子三 文

三 文 又此の世にいかでかゝることありけむとめでたく覺ゆることは、文こそ侍れな。枕冊子に返す返す申して侍るめれば、ことあたらしく申すに及ばねど、猶いとめでたきものなり。遙かなる世界にかき離れて、幾歳あひ見ぬ人なれど、文というものだに見つれば…

無名草子二 月

二 月 「花・紅葉を弄び、月・雪に戲るゝにつけてもこの世は捨てがたきものなり。情なきをも、あるをも嫌わず、心なきをも、數ならぬをも分かぬは、かやうの道ばかりにこそ侍らめ。それにとりて夕月夜ほのかなるより有明の心細き、折も嫌わずところもわかぬ…

無名草子一 いとぐち

一 いとぐち 八十(やをぢ)餘り三歳(とせ)の春秋いたづらにて過ぎぬる事を思へばいと悲しく、たまたま人と生れたる思出に、後世の形見にすばかりのことなくてやみなむ悲しさに、髪を剃り衣を染めて、僅に姿ばかりは道に入りぬれど、心はたゞそのかみに變…

新年のご挨拶

旧年中は大変お世話になりました。 今年も一年間、宜しくお願い致します。 昨年はエントリを81本書いた。 最近あまり書いていなかったのでもっと少ないかと思っていたが、意外と書いているものである。 ただし、内容の充実度はまだまだ低い。 書き終えた後…