22日から25日まで。(修正あり)

22日月曜日。
一旦8時頃に目覚めて、バタバタと支度する奥さんの気配を感じるものの、ベッドから出ていっちょコーヒーでも淹れたろか、という気分にはまったくならない。
そのまま寝続けて、再度目覚めたのは11時頃であった。
ベッドからのそのそと這い出て、シンクに溜まった洗い物を片付けながらお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
コーヒーを飲んでもタバコを吸っても気分転換には効果なしである。
絶望のどん底から復帰する為に、ブログを書き始める。
しかしただ絶望を文章化すればよいというものでもない。
何しろ僕の想定読者は「賢くて想像力豊かで気のいい奴ら」である。(ここで「えー、オレ(ワタシ)違うんですけど」とか思わないでね。僕にとっては今読んでくれてるあなたは断固そうなの。)
なまじ暗い気分を書き連ねてしまうと、僕以上にくらーくなってしまう恐れがある。
僕だって公共の福祉の重要性というものを知らないわけじゃない。
事実を伝えながら、どこかユーモラスな風情を漂わせるべく苦心しつつブログを書く。
あまり成功していなかったかもしれない。
夕方から仕事へ。
試験での配点が低くそれほど重視していなかった「文法」の問題解説を、しつこく細かく教える。
授業後のミーティングを終え、池袋に直行する。
いつもの三人で飲むのだ。
電車上でメールを打つと、どうも二人は先に始めているらしい。
飲み始める前に夕方アップしておいた記事を読んでくれていると話が早くて助かるんだけど、と思いながら池袋駅着。
電話を掛けても、二人ともつながらない。
参ったな、と思いながら、でも今日は歩の仕事がない曜日だからたぶん東口だろうと考えて(歩は西口の飲み屋で働いていて、住まいは東口なのだ。)、のろのろと東口に向けて歩く。
と、着信あり。
結果、東口にある東急ハンズの前で待ち合わせることになる。
ハンズに行くと二人が立っている。
それほど酔った様子もない。
すぐに向かいのサントロペビルの中に入る。
乾杯。
二人はどうも焼肉を食べていたらしく、僕の電話のタイミングが最悪でかなり残してしまったといきなり不満をぶつけられる。
そ、そんなこと言われたって。
話題はすぐさま僕の離婚問題に。
ブログで家庭内のことを書き始めた経緯や、ついつい書き過ぎてしまったこと、それが奥さんの逆鱗に触れたこと、しかもこちらは一切謝罪せずに自分を正当化したことなどを話す。
「それと……もしかしたら僕のこと、足手まといに感じ始めたのかもしれない。」
二人はなんとも言えない顔をして僕の話を聞いていた。
勢史は離婚経験者で、しかもその後結婚直前まで行った相手と破局してからそれほど時間が経っていない。
ついでにその破局の原因になった別の相手とも別れてしまっているものだから、同情心もひとしおだったのだろう。
歩は歩で何かと問題がありそうである(彼は恋愛に関して具体的な話はほとんどしない。)。
しかし意外と場は湿っぽくもならず、和気藹々としたムードで話は盛り上がった。
二人とも、結婚は大事だと思ってるんだねえ。
朝方からカラオケ。
飲み屋では勢史が少し寝てたけど、カラオケでは歩がうつらうつらしている。
なんだか一人元気なのが申し訳ないくらいだ。
カラオケ終了後、歩は帰宅。
その後、勢史と西口の「坐・和民」に入ってさらに飲む。
大きな物語が失われた後に人を導くことの難しさについて、など。
9時頃に王子の自宅に帰り着き、ネットをチェックしながらカップヌードル(シーフード)を食べてから寝る。


23日火曜日。勤労感謝の日、休日。
起きたのは夕方の7時頃だった。
胸焼けが治らずにうーうー唸りながら寝起きの時間を過ごす。
北朝鮮が韓国の延坪島ヨンピョンド)に砲撃したというニュースが入る。
UST中継で煙を上げる延坪島の光景と興奮した様子で語る韓国テレビ局のニュースキャスターを眺めながら、「これはさすがに無理かもしれない」と思う。
アマゾンから『革命か反抗か カミュサルトル論争』と『茶 利休と今をつなぐ』が届く。
まずは『革命か反抗か』から読み始める。
けれども奥さんは僕が本を読んでいても容赦なく話しかけてきて、返事をしているうちに本を置いて本格的に話し込む。
「ブログはブログでしょ。本じゃないのにあんな文章があったら、そりゃビックリするよ。でもそれって言い訳みたいなものじゃない。期待値を下げておいて、それで普通よりマシな程度の文章を効果的に見せてるだけでしょ。」
「それは……反論できないね。そのとおりかもしれない。」
「あの、女子高生のカバンが背中に当たってるやつとか……。」
僕は俄然身を乗り出して頷く。
「うん。」
「あれだけで一本短編小説くらい書けるでしょ?ああいうのは小説で読みたいの。なんであんなのブログに書いちゃうのよ。」
僕は非難されながら、嬉しくて仕方がなくなってしまった。
「本を大事に思ってるんだね……あー、どうしよ、気合入れて書いたところが伝わったってだけで、嬉しくて仕方がない。あれね、あそこだけ詩にしたの。次の日になってからも校正しまくってさ……いやあの、今朝まで酒飲んでたでしょ?それで話をしてさ、お互いのブログを読んでますって前提で話をするんだけど、案外話がかみ合わないからわかっちゃうのよ、ああ、あんまり読んでないんだって。いやそうじゃないな、うん、少なくとも、僕がアイツらのブログを読み込むほどには、アイツらは僕のブログを読んでないんだ。そうするとさ、やっぱり寂しいんだよ。もっとじっくり読んで欲しいの。味わってさ。でもそうはしてもらえないし、すごく丁寧に書いた部分も気付いてもらえない。寂しいなあ、って思ってるところでコレだよ!僕の妄想ではかなりマメに読んで、しかもあそこが詩だって気付いてくれた人もいたみたいなんだけど、でもやっぱり生の反応が返ってくると違うね。すっごく嬉しい。」
こないだ「わかったふり」なんて言っちゃったのは間違いだったな。と思いながら、僕はまた余計な一言を付け足す。
「あれはしかも、『わざと少しヘタに書く』ってのにチャレンジしたんだよ。新機軸で。」
「そういうのはどうでもいいんだけどさ。」
奥さんは「ヘタに書いた」部分に反応してしまったことを後悔したのか、またご機嫌斜めになってしまった。
でもバカにしたつもりはないんだよ。
まあ、いろいろあってさ。
深夜、町山智浩ポッドキャスティングUST公開収録を見ながら、腹を抱え床を転げまわって笑う。


24日水曜日。
この日は全然覚えてないなあ。
夕方から仕事に行きました。
引き続き『革命か反抗か』を読んでました。
夜、奥さんに「離婚しなくてもいいよ」って言われました。
僕が離婚して大連に行かずに済むことを期待(?)した人がいるかもしれないという百万分の一くらいの確率に賭けて、ツイッターで土下座しときました。
そのぐらいかな。
あ、ジャンプ読んだかも。
なんか「てめえいー加減に仕事しろよ!」って思いっきり言われた気がしました。


25日木曜日。
久々に心安らかな目覚め。
昼頃に「異邦人の愛国」というタイトルでブログを書こうと思いつく。
池袋に行って、油そばを食べてコーヒー豆を購入。
ドトールで『革命か反抗か』。
帰宅して仕事へ。
ドトールで読書の続き。
結局ブログは書かなかった。
大まかな流れとして、「人って基本的に孤独」→「わかりやすく特殊な部分がある人は一層孤独」→「だから隣人愛や愛郷心なんて知ったこっちゃない」→「でももしかしたら孤独な人(異邦人)のためのコミュニティがあるかも」→「ありませんでした」→「何も信じなくなりました(ここで太宰の『御伽草子』登場)」→「でもできれば楽しくやりたいです」→「人類学者的好奇心=愛国(『悲しき熱帯』引用で〆)」というところまでは考えたんだけど。
精進が足りませんなあ。
奥さんは金曜早朝に出発して京都に行くと言いつつ、夜更かししていた気がする。


あー、もう眠いのでここまで。
抱腹絶倒北朝鮮ネタを練りに練ったのに……。


(12/1 0:45追記 「愛国」の後に、「内なる『外』としての他者そして異邦人」というのも考えてました。)