つながる

 芥正彦、というひとがいるらしい。


 ふと気が向いて、ウィキペディア「芥正彦」の項を見てみる。


三島由紀夫との公開討論会に(中略)参加」とある。


 三島と全共闘学生の討論会……あれ、もしかしてyoutubeで観たアレのことか?面白いんだよな〜、しかもビックリするんだ。三島にも、学生たちにもユーモアがあって。三島は自衛隊基地に突入して割腹するし、あさま山荘事件はあったしで陰惨なイメージが先行しがちな時代が、少し違って見えてくるような映像なんだ。


 その映像の中に、一人踊っていたヤツがいる。


 三島の前で気張って、観衆の前で気張って、ガチガチになりながら話す別の学生を遮るように、突然踊りだした男。


「関係絶ったところから逆転するのが革命ってもんじゃねーのかよバカヤロー!」


 彼は野次に怒鳴り返す。これが咄嗟に出てくるところが素晴らしい。三島との一対一でも、「いかにも気負いがないように見せようとする微かな気負いをこめて」喋っていた。ニコニコと笑いながら「幻想の中で?」と問い返すのも様になっていた。


 その映像には、「三島と討論した学生たちのその後」のインタヴューが含まれている。編集されていて、その内容を見ることはできない。でも、チラリと姿が映る。


 踊った男が、中日ドラゴンズのキャップを被って座ってるんだ、コレが。


 正直、ちょっとしたショックを受けた。


 だって、あんまりにも普通のおじさんに見えるんだもの。


 サイテーじゃないか、「国境なんて」って言ってた男が、一プロ野球団に帰属意識を持ってるなんて。


 でも、少しだけ気になっていたことがある。


 すげーサッパリした顔してるんだよね、その人。なんというか、「何も後ろめたいことはありません」というか、「自分に正直に生きてきました」、というか。


 この人が芥正彦だったらいいな、と思ったんです。あの後もそのまま生きて、劇団を主宰してるなんて、素敵じゃないですか。


 ただ、「全共闘C」が芥正彦かどうか、特定するための手段がない。


 うーんうーん、と唸っていたら、突然あるものを思い出す。


 そうだ、ニコ動があるじゃないか。


 もしも同じ映像がニコニコ動画にもUPされていたら、突っ込み好きの観客たちが、登場する一人一人に「コイツは○○」みたいなコメントを付けてるかもしれない。その中に、芥正彦の名前が出てくるかもしれないじゃないか。


 最近アカウントを作ったばかりのニコニコ動画にアクセス。


 「三島 全共闘」で検索する。


 ビンゴ


 同じ映像だ。


 踊る男の映像に、字幕が被る。


「芥正彦」


 ふたたび、ビンゴ。よかった、ホンモノだったんだ。


 なぜか安堵に胸を撫で下ろし、気をよくして芥正彦の関連情報まで調べ始める。内田先生のブログに出てきた中島葵って、内縁の妻だったんだ。へえー、なんかすごそうだなあ。


 と思ったら、ホントにすごかった


 森雅之の娘!?


 オイオイ、森雅之って、黒澤明の『白痴』でムイシュキン役をやってたあの森雅之か!?


 とゆーことはアレか、小津が原作にしまくった里見紝の血縁じゃないか!


 そんな人が日活ロマンポルノに出てたのか……。


 クラクラするなあ、もう。<10月9日 追記>

 ドラゴンズの帽子の人、芥正彦じゃないかも。グーグルでイメージ検索しても写真出てこないし、ちゃんと検証するとしたら出演してる映画でも観るしかないなあ。