「倍音」の授業

私はホワイトボードに、「文学的倍音」という言葉を書き付けた。
「まず、『倍音』っていう言葉の説明から始めるね。ドレミファソラシド〜♪の高いドの音は、低いドの音の倍の周波数を持っています。人間の耳はこの二つのドを同じ音だと感じるんだけど、音波の周期は二分の一になってるのね。はい、ここでこっちから質問。ホーミーっていうモンゴルの歌があるんだけど、知ってる人いるかな。あー……、いないか。じゃ、ちょっと歌います。」
うぃーいいーんんーうーぃいー。
あまりうまくはない。
生徒たちから、クスクス笑いが漏れる。
「えーと、まあ、こんな感じの歌い方をするのね。んで、この歌い方をしてるときって、二つの音が一人の人間から同時に出てるわけ。倍音が出てるのね。はい、それじゃここまでが音楽の倍音の話。こっから先が『文学的倍音』の話だよー。一人の人間から二つの音が出るように、一つの文から、二つ以上の意味が読み取れることがあるんだよ。


あ、マズイ。
コナンが……。