映画

タルコフスキー/ストーカー

──自分で映画を見てからでなくては、なんともいえないなあ。 タルコフスキー映画はずっと見たかったし、いい機会だと思って見てみることにした。なぜか昨日は犬の散歩をしている人をよく見かける日で、 ──お前も大江の言いなりかよ。このワンコロが。 とか偶…

ペニー・マーシャル/レナードの朝

ロビン・ウィリアムスの笑顔と、レナードが薬剤投与によって一時的に得た光を失いつつある時のダンス・シーン。彼女がレナードの手を自分の腰に押し付けるさり気ない仕草。 その二つの場面だけで見る価値のある映画だと思う。 オリバー・サックス死去のニュ…

コーエン兄弟/ノーカントリー

アントン・シガー(ハビエル・バルデム)は神ではない。 彼は有限性を逃れることのない物理的存在である。 食べなければならず、飲まなければならない。 彼の身体は人間の道具によって傷つき、人間の道具によって癒される。 彼は標的を探すために、自らの足で…

極私的映画鑑賞

『エデンの東』を観た。 「トラスクさん 聞こえます? キャルでなく私なら返事していただけます? 言うことはおわかりね 目は曇ってもお心は確かなはずよ お分かりでもお顔に出せないのね トラスクさん なれなれしくお話してすみません 愛されないほどかなし…

郵便配達は二度ベルを鳴らす/ボブ・ラファエルソン(最終版)

フランク(ジャック・ニコルソン)がヒッチハイクしてたどり着いたのはツイン・オークスというガソリンスタンド兼食堂だった。 経営者はニック・パパダキスというギリシャ系移民。 見え見えの演技で食い逃げしようとするフランクに、ニックはしかし、「うち…

伊丹十三/静かな生活

「人間は人間の道具ではない」 完成途中の絵本に肉筆で書き込まれるこの言葉は 幾度も甦って私の未熟を打擲する。

ベルナール・ラップ/私家版

ベルナール・ラップは寡作の映画監督なので、ご存じない方も多いかもしれない。 1945年生まれのフランス人で、どうも本業はジャーナリストらしい。 彼には1996年の『私家版』、2000年の『趣味の問題』と二本の作品がある。 私の生涯の十本に入る…

小津安二郎/浮草

近所のゲオが新装開店した、と思ったら小津の映画が消え失せていた。 「あの、すみません。新装開店前の店舗から商品をすべて移したわけではないんですか?小津安二郎の映画が見当たらないんですが……。」 「はあ、はい。すべて、というわけではないようです…

「パフューム」観たよ(続きの続きで終わり)

●「愛と精神」はパリを席巻したけれど と、書き出そうとして正確を期し、検索したらいきなりつまずいてしまった。グルヌイユがバルディーニに弟子入りするきっかけになった香水「愛と精神(Love and Psyche)」の名前を、多くの人が「愛と精霊」と書いていたか…

「パフューム」観たよ(続き)

●欲望の終わりと死 チャップリンの「ライムライト」に、こんな有名なセリフがある。 「人生は欲望だ、意味じゃない。」 必ずしも全面的に賛同するわけではないけれど、単純に否定してしまうことのできない力強さを感じる言葉だ。人がその生において何をなし…

「パフューム」観たよ

今年は300枚の中編一本に100枚程度の短編を三本書きます!という年頭の誓いはどこへやら。気づくとさっぱり書いてない。小説どころか、まとまった文章も書いてないんだもんねえ。そりゃ会う人会う人「お前何やってんの?」って訊きますよ。新聞読んで…