2009-01-01から1年間の記事一覧
中野重治は動物園が好きではなかった。けものの声は騒がしく、そこにはいつもひどい臭いが漂っていた。 けれど、彼はそこに度々通うことになる。人付き合いのため、それから──────山猫を見るため。 「山猫めは全身まっ黒の毛に包まれて金いろの目をしていた…
大きな男の投げた槍は 眉間から後頭部までを貫いて 堆積した時間を串刺しにする 詩人の心を持ったまま 生き抜くということ 動かぬ心 感じる心 一人の人間のなかに 宿りうる剄さの 極北
はてなダイアリーでは、どんなキーワードでこのブログがヒットしたのかわかるようになっています。 最近の第一位は「誤信念課題」。第二位は「無名草子」です。 誤信念課題と打ち込むと、僕のブログがかなり上位にヒットしてしまうんですね。 でも、誤信念課…
『エデンの東』を観た。 「トラスクさん 聞こえます? キャルでなく私なら返事していただけます? 言うことはおわかりね 目は曇ってもお心は確かなはずよ お分かりでもお顔に出せないのね トラスクさん なれなれしくお話してすみません 愛されないほどかなし…
同音のことばがたくさんあるのは ぐうぜんじゃないんだよ
高校時代の同級生に、奇妙な男がいた。 落語研究会に属していた。 顔はヒトラーに似ていて、チョビ髭を生やしたら途端に逮捕されそうな顔をしていた。 そいつが言った。 「落語ってのは、業の肯定なんだよ。」 私は落語をほとんど聴いたことがない。 だから…
私に書くべき言葉など、あるはずもないのだった。 内田樹を内田先生と呼ぶのなら、この人も先生と呼ばなければいけないはずだ。 だが、私の身体は「先生」という呼称を拒否する。 平川克美。 ビジネスマン。 詩人。 男。 この人、かっこよすぎる。
「愛」について考えるたびに、私は若いころに読んだ西欧の作家の、こんな言葉を思い出さずにはいられない。 「人はなぜ去ってゆくもののみを愛するのだろうか。」 ちょっと意外にも思われる言葉だが、よく噛みしめてみると、すこしずつ重い真実がこころに伝…
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あのー、いまちょっとブランショの『明かしえぬ共同体』を読み始めまして……。 過去最大級の落し穴にはまっております。 ぬくぬくしております。 ああ、しゃーわせ。
5月15日 ウブド 朝食を済ませてから、またビーチへ。 道すがら、妻が帽子を買う。 元々5万ルピアで売られていた帽子を2万まで値切る。 「2万で売ってくれるなら買うし、それ以上なら買わないよ。」 それで利益が出るのなら売ればいいし、出ないのなら…
これはもう本当につまらない揚げ足取りに過ぎないかもしれなくて、書くことが相当に憚られる事柄ではあるのだけれど、それでもどうしても気になってしまって気になってしまってどうしようもないことというのはあるもので、そんなことを時には書いても許され…
5月14日 結婚式 目が覚めて、持ってきたデジタル時計を見る。 日本時間で7:00。 インドネシアとの経度の差は27度あるけれど、時差は一時間しかない。 朝六時に起床してしまった。 自覚はないけれど、微かな緊張状態にあるらしい。 二度寝できそうも…
5月13日(水) バリまで 荷物はショルダーバック一つに収まった。 着替えを三日分と文庫本一冊。 それに再発行したばかりのパスポートに歯ブラシセット、メガネケース、ハンドタオルを一枚。 空港の免税店でラッキーストライクのメンソールを1カートン買っ…
17日に無事帰ってきました。 バリ日記も少し書こうと思います。 メモもろくに取っていないので、忘れないうちに。
「主体クセエんだよ、お前の書くもんは。」 と友人に言われてから、そんなもんかなあ、と考えていたのだけど、他の人にもそういうふうに見えるらしい。 んなこと言ったって認識論なんて相手にしてらんないしこの文章を打つためにキーボードを打っている指の…
がありそうですね。ホントに。 なんだか書けば書くほど色んな方を困らせているような気がします。 いーかんじに楽しくやれれば、それだけでいいんですけどね。 物分りが悪くて、頭が固くて、思い込みの激しいワタクシですが、最近はそんな自分も嫌いではあり…
この文章は批評ではない。 師の著作を批評できるものは弟子ではない。 私はこの「作品」からあまりにも多くを学んだ。 あまりにも多くを学んだがゆえに、言語化するのにひどく時間がかかった。 言語化が完了したわけではない。 言語化が完了することもない。…
フランク(ジャック・ニコルソン)がヒッチハイクしてたどり着いたのはツイン・オークスというガソリンスタンド兼食堂だった。 経営者はニック・パパダキスというギリシャ系移民。 見え見えの演技で食い逃げしようとするフランクに、ニックはしかし、「うち…
パーティーの開始時刻は7:30。 表参道駅に到着した私の時計は7:46を指していた。 かつかつと靴底を鳴らして、目的のビル方面の出口を目指す。 走り出しはしない。 焦るそぶりも見せない。 私は紳士だからだ。 地下から上がって交差点を見回すと、街…
今日が独身最後の日となる。 結婚したって何一つ変わりはしない。 そう思うのはきっと私の願望で、変わらずにいる私を糾弾する声は日々高まり、いずれ「変わらずにいること」と「変わること」のコストのバランスは逆転するのだろう。 妖精と戯れる日の終わり…
最近靴下がよく破ける。 「春だねえ。」 なんて風情のある様子ではなく、 「お、オレ……いっしょうけんめい……がんばったよ……。」 「こ……こんなはずじゃ……。」 「な、なんじゃこらぁー!!」 といった無念がひしひしと伝わってくる感じの破け方(正確に描写す…
タイトル以上に言うことが見つからない。
研修に行けなかったことを考えているうちにモヤモヤしてくる。 研修というのは「給与を頂きながら勉強させて頂ける非常にありがたい制度」である。 企業がコストを投じることによって授業品質を上げ、最終的には顧客であるところの生徒たちの顧客満足=成績…
私は25日の授業を終え、報告書を書き、約束の時間にやや遅れて池袋に到着した。 これから、大学時代からの友人二人との飲み会である。 一人が店長を勤める池袋丸井そばの飲食店に到着すると、見慣れた顔が二つ並んでいる。 「おーっす。」 「おつかれ。」 …
ついに25日になってしまった。 本日の予定は19時から21時まで授業。 そのあと報告書作成。 24時から池袋で飲み会。 明日には埼玉に戻って朝10時から研修。 その研修が18時まで続く。 私の頭脳は24時間以上続く知的負荷の嵐に耐えられるのか。 …
三人の姪を前にして、私は一つの実験を開始した。 彼女たちの年齢は当時、5歳、9歳、11歳であった。 「はい、ではこれから実験を開始します。お話をして、最後に君たちに質問をしますから、よーく聞いてください。」 私は手元にあったチラシの白い裏面に…
「答えは……芥川。」 「芥川龍之介」という名前を書きながら、私はすーっと頭から血が降りていくのを感じていた。 「芥川龍之介は、『河童』という作品を書いています。主人公は精神病の患者です。その患者が、滔々と河童の国での出来事を話す。そういう話で…
「人間は人間の道具ではない」 完成途中の絵本に肉筆で書き込まれるこの言葉は 幾度も甦って私の未熟を打擲する。
「茂木さんが書いていたのは、子どもの頃の思い出話だった。昆虫少年だった茂木さんの家の近所には、二つの森があったんだって。一つは、『ミヤマセセリ』……って言ったかな。そういう名前のチョウチョがたくさんいる森。」 私はホワイトボードに「ミヤマセセ…